ふぅーっと彼はため息をついた。
「大学の出入りなんてちょろいもんだ・・・」
連休で休日のはずなのに学生達が大勢出入りしている。
その中をそしらぬ顔して、躊躇無く大学の門をくぐった。誰も疑う者はいないようだ。
「さて目的の場所へは何処へ?」と心の中で思ったが、だからといってきょろきょろはしない。
そんな仕草を見られたら、明らかに怪しいと思われてしまう。
東館と書かれた張り紙があったので、それに従って進む。確信があるわけではないが、たぶんこの方向だろう。
通って行くのは昔の実験練の脇。とにかく張り紙に従って進む。
建物の裏を通り、ようやく昔のグラウンドへ・・・
そこまで来て景色が一変していることに気が付いた。
既に昔の生協や食堂練は取り壊されていた。地下の部分までごっそりとだ。当然講堂や昔の教室はない。なにやら、また、新しい建物を建てるようだ。
そんな情景もじっくりとは見ず目的地へ向かう。
どうやら、その東練へ付いたようだ。しかし目的地はどこだ?
どうもこの裏のようだ。とにかく目の前の建物へ入っていく。
もちろんきょろきょろはしない。とにかく廊下を進む。先の方に出口が見えた。
出口から出ると、そこは目的の場所だった。
躊躇せずに建物に入り、団体が使用している部屋の場所を確認。
どうやらつぶれずに残っているようだ。
2階へ上がり目的の部屋の前へ。案の定誰もいない。
ハイテク電子ロックの部室なので開けるわけにはいかない。
ま、予定通りだ。
素早くカバンから紙を出しコメントを書いて、部室の前へ張っておいた。
OBの迷ティアです。今週の日曜日○×公園でオリエンやってます。宜しければ来てみて下さい。
役員やってます。
このメモを書いた紙はスプリントの要項。
とにかく目的は達成したので、今来た経路をそのままスタスタと戻った。
これでよかったのだ。ヘタに顔を合わせない方がいい。
彼らにとっては黒船なのだ。必要以上に圧力を感じさせてはいけない。
あとは彼らが選択してくれるだろう。
変な奴が来て張り紙して行ったと思われて捨てられてしまうかも知れない。
だが、それでもいいのだ。もっともそんなこと知り得ることもないだろう。
期待は必要以上しない。
ただ石を放っただけだ。投げ返して来るかは彼らが決めることだ。
そう言い聞かせて家路へ着いた。
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